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坂茂建築設計が手掛けてた「紙の教会: クライストチャーチ ニュージーランド」とは

2018年11月28日

KENTOの峰田です。
建築の可能性をSTUDYできる素敵なお話をご紹介。

2011年2月にニュージーランドを大地震が襲いました。
地震によって半壊してしまった、とある大聖堂を日本人建築家が再建したことで、世界中から注目を集めたことは記憶に新しいと思います。崩壊した大聖堂に変わる仮設大聖堂は、クライストチャーチの新たな観光名所となり世界中から多くの人が訪れています。

何故被災地が観光名所になったのか。

被災地を訪れる目的は人それぞれ異なります。主に被災で亡くなった方の追悼、被災の恐ろしさや自然の驚異を知ること、復興支援やボランティア、同じ事が起こった際に被害を最小限にする為の学びなどが考えられると思います。一方で、被災地に住まう人々としてはいかがでしょうか。恐らく一日でも早い復興と震災の事実を色あせることなく周知し、正しい判断や物の見方により、後世への希望を願っていると私は思います。
ニュージーランドの震災を乗り越えたクライストチャーチには、世界の人々を魅了する教会が創られました。その教会を目指して世界各地から人々が集まることで、クライストチャーチは復活を遂げたのだと考えます。

十字架も祭壇も全てが紙で創られた教会とは?

多大なる被害をもたらした2011年の地震によって、クライストチャーチの大聖堂の実に70%が崩壊しました。その代わりとなる仮設大聖堂の建設に名乗りを上げたのは、特殊な紙で作る仮設住宅などを世界各国の被災地で建設してきた日本人の坂茂氏でした。
仮説教会の建設にあたる費用は寄付金で賄われるのですが、何よりも驚くのがこの教会の建設に使われる材料が紙であることです。
紙といっても、防水ポリウレタンおよび難燃剤でコーティングされた600ミリ径(24インチ)のボール紙官は耐久性も高く50年は問題なく使える特殊な品質のものです。この材料を使用し、シンプルなAフレーム構造で構築され、ファサードには、ステンドガラスが設定された仮説聖堂は、以前の大聖堂を彷彿させるデザインとなりました。建物の中をみると、大小様々な筒状の紙で主要部分が作られているのがわかります。屋根部分はもちろん祭壇や十字架も全て筒状の紙で作られていて、その丸みと木のような色のせいか建物の中は独特の温かみが感じられるようです。世界に類を見ないこの紙の教会は、700人を収容できる市民の為の地元のイベントやコンサート等にも使用される聖堂となりました。

ステンドグラスから差し込む光

崩壊前の大聖堂と同じく、この仮設大聖堂にも正面にステンドグラスが施され、その見栄えといえば、仮設とはいえ華やかな印象を与えます。ステンドグラスから差し込まれる穏やかな光により聖堂内の神聖な空間が演出されています。建物の外側は半透明な素材が使われているので、屋根部分の紙の間からも外の光が中まで届き、中は自然な光で満たされ、悩みや不安にかられる人々は優しく包み込まれるような感覚になるのではないかと思います。

大聖堂復元が決定

2017年9月、地震から6年半経った昨年、壊れた建物を利用して元の大聖堂を復元することが決定しました。一時は取り壊しが決定したものの、市民の強い反対に合い、決定は保留されたままでした。その間、全て壊して新たに同じ大聖堂を立てるのか、新しいデザインにするのか、など様々な案が議論されていましたが、最終的には元の建物を利用して復元することに落ち着いたようです。建設費用は約85億円(1億800万ドル)の見込みで、完成には10年かかるとのことです。

建築家は言います。

人々は、地震によって殺されてたのではありません。彼らは建物の倒壊によって殺されたのです”。この紙管の構造は、住宅にさえもなりえます。何か素晴らしい建築物を創ることが建築家の仕事ではありません。臨時の建造物や住まう方の為に必要な空間等を建設することは、建築家としての責任を果たす事につながると沢山の建築家が言います。

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